追 風

つばさ

 

※2020.5.3からTwitterで書いたものを

まとめてみました

加筆修正あります

 

#1

東の出窓から吹き込んでくる風が気持ちいい。

掛け時計は午前10時45分を差している。

外から注意喚起を促す声が聞えてきた。

≪日中の外出時は 必ず サングラスの 着用を ……

「キターシムって日中はほとんど動けないんだよね?」

ソファに寝ころんでいた学(まなぶ)は言った。

 

#2

「それがね、動けるキームがいるみたい!

キッチンからリビングを振り返り、維(つなぐ)は答えた。

「へえ。でキーム?今はそんな風に呼ぶの?」

維はこくりと頷く。

キターシムという未知の生命体が現れたのは1年程前だった…。

 

その特徴は

①夜活発に動く。接触すると、火傷したように赤く腫れたり水ぶくれが出来たりして、

痛みは1週間から10日ほど続く。

②水が苦手。全身が濡れると燃え尽きた灰のようになり消える。

③風が苦手。風速4m以上の日は現れない。

④見た目は…

💛ここでTwitterの投票機能使ってみました。

ご協力ありがとうございました。

人間のよう(8%)

鳥のよう(54%)

虎のよう(8%)

その他(30%)

 

#3

④見た目は鳥のよう。カラスに大きさや色は似ているが、羽だけ鮮やかな朱色をしている。

その羽は人の手のように器用に動き、人間に襲い掛かってくる。

⑤そしてキターシムは、決して死なない。

 

その生命体とは今のところ共存の選択しかない。

 

学はテレビの風速予報を見終わると、玄関へ向かう。

「ちょっと何処行くの?」維は慌てて追いかける。

「風速5m以上。コンビニ行ってくるよ」と学。

維は玄関に置いてあるサングラスを渡す。サングラスを掛けているとキターシムは近づいてこない。

外出時はいつでもサングラスを掛けるようになった。

夜キターシムは活発になるので、街を歩く人は少ない。

働き方も大きく変わりつつあった。早朝から夕方までの就労時間。

夜営業の飲食店はデリバリーがメイン。ドローンや宅配ロボットが夜の街を動いている。

学はサングラスを掛け家を出た。

 

#4

テレビではキターシム対策本部の会見が流れている。

維はソファに座る。

≪この生命体はイギリスのカンブリア、スカーフェル・パイク山に拠点があり…≫

スカーフェル・パイクの映像がテレビに映し出される。

「綺麗なところ…」維は呟く。

≪…本国ではこの生命体を「英2019」と称し、

対策また生命体の解明を続けて参ります。≫

「はなぶさニーゼロイチキュウか。いいね」背後から学の声が聞え、維は振り返る。

「おかえ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょーーーーーーーっと!」

維は素早くソファからおり身を隠し、テーブルのサングラスを掛けた。

 

#5

維はリビング・寝室・キッチン・バス・トイレ…と

魔除けの様にサングラスを置いていた。

まさかこんな形で役に立つなんて。

学の右肩にはキターシムがのっていた。でも大きさは鳩くらいだ。

「ずっと着いてくるんだ。襲う訳でもなく」と学。

「誰かに見られた?」維は相変わらずソファに隠れたまま尋ねる。

「誰か…皆逃げていっちゃって。あ、下の博多さんに会ったよ

「マンションの人に見られてるーー!で、下の階の博多から引っ越してきた、佐々木さんだから」

サングラス越しで見えないが、維は学を睨む。

「そうそう。博多の佐々木さん」きっと学は覚える気はない。

「はなちゃんて呼ぼうか。女の子な気がする」

学はのんびり言った。

 

#6

学はソファに腰を下ろす。

「はなちゃんて…」維は呟きサングラスを外すと、キターシムを見つめた。

「ほら、なにもしない。つぶらな瞳でこっちを見てる」学はすっかり魅了されているようだ。

するとキターシムは目を閉じてウトウトし始めた。

「寝ちゃったね…」維は小声で言う。

学は自分の膝の上に、はなをのせた。

「どうするの?」維は問う。

「一緒に暮らしてみたい」と学は躊躇わず答えた。

 

#7

はな(英2019)が家に来て10日程経った。

平日、学は出勤している為、家には維とはなだけ。

数日前に梅雨入りし、部屋干ししたリビングは湿度が高い。

この湿度も苦手らしく、リビングに置いたベッド(猫用を購入)で、はなはじっとしている。

降ってるけどサングラス掛けて行こ 維は呟く。

「はなちゃん、買い物行ってくるね」

維の声に、はなは顔をあげた。

手を振る維を見つけ、またすぐベッドに顔を埋めた。

 

雨は静かに降り続いている。維のようにサングラスを掛けて歩く人も少なくない。

「維ちゃん!」背後から肩を叩かれる。

「維ちゃん、大変っ大変っ」

 

#8

維が振り向くと、そこには黒田さんが慌てた様子で立っていた。

彼女は維と同じマンションの201号室の住人。

何度か挨拶を交わすうち、お互いの家を行き来したり一緒に旅行したりするほど親しくなっていた。

「あ、黒田さ」維が言い終わらないうちに彼女は話し出す。

「キームに襲われて死んだ人がいるみたい!」悲鳴に近い声で言った。

「本当に!?」維は息を飲む。

そのタイミングで2人が立つ大通りに救急車のサイレンの音が近づいてきた。

 

#9

「…なんだか、変だね」黒田さんは言う。

彼女は凝視している。維もそちらを見た。

救急車は路地から大通りへ向かってきたが……

「黒田さん!」維は彼女の手を取り少し先のコンビニへ駆け込んだ。

程なくして、救急車は蛇行しながら大通り沿いのラーメン店に突っ込んだ。

救急車と接触した車は他の車にぶつかり、急ブレーキが大きく響き、景色は一変した。

救急車は車体半分が店に突っ込んでいる。

交通渋滞が起こり野次馬が出来始めている。

そして英が朱色の翼を羽ばたかせて救急車から出てきたかと思うと、

野次馬めがけて急降下してきた。

悲鳴が巻き起こる。

「雨降っているのに…英平気なの…」維は呟き、その光景を見ていた。

 

#10

雨は止み夕暮れ、黒田さんを抱えるようにしてマンションへ戻ってきた。

サイレンの音は止まない。

2人は無言のまま別れた。

ドアを開けると、玄関に学のスニーカー。

「学?帰ってるのー」維は声が震えている。さっきまで見ていた惨劇のせいだろう。

学の返事はない。

 

#11

正面に見えるリビングのドアは少し開いている。

湿気を帯びた空気。

リビングに学は小さく丸まって、倒れていた。

白い壁の所々には赤い絵具で描かれたみたいに、血液が付いている。

ベランダの窓は小さく割れていて、ヒューヒューと風が音を立てていた。

学の瞳は潰れている。何度も突かれたよう跡も見える。

学は、

学は、死んでしまった。

おそらく、はなに襲われたんだろう。

 

維はベランダへ出た。

サイレンの音。

夕焼け。

舞う英。

幾度も、幾度も、維の頬を涙が流れた。

 

最終回

#12

---1年後---

維は、201号室黒田さんの家に住んでいる。

≪英による死者数昨日77名。本日の予報、晴天・風速3m。

英襲撃予防、サングラス着用徹底を。

晴天の為、本日も水散布を1時間毎実施します。

命を守る行動を心がけましょう

テレビからは、毎日英情報が流れる。

「水散布、意味あるのかな」

「おはよ、維ちゃん。消えない英は時々いるみたいだけど、やっぱり水は効果あるみたい」

 

午後バイト終わり

映画を観に行こう

2年振りのかな映画館

サスペンス強めの

アクションあり

今話題のあの映画

 

 

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